アクリル画に使う筆や絵の具以外の道具の紹介と便利な使い方   (その1)

はじめまして。
画家の佐藤 静です。

アクリル絵の具を描く道具は油絵や日本画ほどたくさん用意しなくても大丈夫です。

主なものは筆洗バケツやパレット等があればもう描けてしまいますが、それ以外のものもご紹介していきます。

筆洗バケツ

筆洗バケツは使った筆を洗うバケツですが、筆にたっぷりの絵の具をそのまま水に入れてしまうと
一気に水が汚れてしまいますので、ぼろ布やキッチンペーパーなので一度拭いてから洗うように
しましょう。

拭くときにはキッチンペーパーで筆の根元を軽くつまんで、筆を手前に引くようにして絵の具を取り除きます。

あまりギュッとつまむと筆の毛が抜けてしまうので注意しましょう。

筆洗バケツは3つから4つの槽に分かれています。

必ず洗う順番を決めてくださいね。

第1槽の筆洗い

最初に洗う槽でしっかり筆の絵の具をおとします。

筆を水に入れてシャバシャバとゆすりながら洗い、最後に底の部分に筆の穂の側面を軽く押し付けて右左と擦るように動かして洗います。その際、筆の穂が乱れないように意識して洗いましょう。

そうするとしっかり絵の具が取れていますね。

最後にキッチンペーパーで水分を除きます。

こうすることで次の槽の水を汚さずにすみます。

第2槽~の濯ぎ

第2槽からは3槽と同様な濯ぎ方をします。

ここからは簡単、筆を入れてシャバシャバして、濯ぎ終わったらキッチンペーパーで拭くだけ。

第4槽があれば濯ぎに使ってもよいですし、きれいな水のまま描いている途中に筆を濡らすために取っておいてもよいです。

  ※筆洗バケツや取っ手についている穴は筆を立てて一時保管する場所です。

   筆の柄の部分を穴にさして逆さまに保管しますが、これは一時的にしてください。

   筆の長時間の逆さま保管は筆を痛める原因になるのでお勧めしません。

パレット

木製パレット

紙パレット

パレットとは絵の具をチューブから出しておく場所、それから絵の具を混色する場所ですね。

ですからパレットとするものは木製、金属、プラスティック、紙なんでもいいんですが、一番のお勧めは紙製のパレットです。

市販の紙製のパレット以外のものは水を吸収しやすかったり、使用後の片づけが大変になります。

絵の具をよく拭き取って洗浄などもしなければならなかったり、またいくら洗っても絵の具の色もだんだんと残ってしまいます。

紙製のパレットは画用紙のように水を吸い込まず水をはじくコーティングがしてあり表面はツルツルしています。

使用後は一枚はがしてゴミにそのまま捨てるだけで済みます。

アクリル絵の具はとても乾燥が早くのんびりしているとすぐに固まってしまいます。

絵の具をパレットに出す際に、折りたたんだキッチンペーパーを水で濡らしそこに絵の具を出していくと乾燥が防げます。

私は絵の具にスプレーボトルで時々水を掛けて乾燥を防いでいます。

忘れると固まってしまいます。

途中絵を描くことから離れる場合には、ラップを絵の具の上から掛けて乾燥をさせないようにします。

こうすれば、結構長い時間置いておいても大丈夫ですよ。

メディウムなど

メディウムなどとしたのはジェッソや保護ニスについてもご説明したかったのでここでご案内することにしました。

まずはそのジェッソについてです。

ジェッソってどんなもの。

キャンバスや、板などに絵を描く前に絵の具を塗りやすくするために下塗りをして下地を作る
材料です。

キャンバスや板は処理をしていな状態ですと吸収がよすぎて絵が描きにくい状態です。

そこで、予めジェッソを塗ってアクリル絵の具を塗りやすい状態にするのです。

板の場合はすでにツルツルの状態ですが、キャンバスは木の枠に麻の布を貼ったものなので
そのままでは麻布の布目がザラザラしています。

キャンバスにジェッソを塗り、ザラザラを滑らかにして細かいものまで描けるようにします。

ジェッソの塗り方

ボウル等の容器にジェッソを取り、水を加えてややとろみのある牛乳程度まで薄めます。

水で薄めたジェッソを刷毛でキャンバスに塗っていきます。

縦を塗ったら、次は横と方向を変えて塗ります。一回に塗る量はあまり多くしないことが大事です。

乾かしてからまた同様に塗っていきます。

これを数回繰り返し、表面が納得する滑らかさになったらOKです。

この状態ですと、刷毛の塗り跡が残ったりするので、やすりで擦り平らにします。

完全に乾かしジェッソが固まったら、耐水性の紙やすり#220ぐらいの粗目のもので擦ります。

擦る際はキャンバスにスプレーで水を吹きかけて濡らしておきます。

紙やすりを手に持つか、かまぼこ板のようなものに巻いて円を描くように擦り表面をツルツルにしていきます。

やすり掛けが終わったら水で濡らしたぼろ布などを硬く絞り表面の粉を拭き取ります。

ジェッソの組成

ジェッソはアクリル絵の具の組成に似ていて、アクリルエマルジョンに炭酸カルシウムとチタニウムホワイトが入っています

通常は白く透明性はありません。

ジェッソには白以外の色のついたものもありますし、自分で絵の具を少量混ぜてカラージェッソを
作ってもいいです。

ジェッソにはメーカーによってS、M、L、LLなどの粒子の大きさの違いによる商品があります。

SかMで十分細かい粒子であると思います

あえて粗い表面で描きたいときはLやLLを選択するとよいでしょう。

メディウムにはいろんな種類がありますが、私が使っている一般的なものを紹介します。

ジェルメディウム

よく使っているのはホルベインのレギュラータイプとハードタイプ、ソフトタイプも使います。

ゲル状のときは乳白色をしていますが、乾くと無色透明になります。

絵の具と混ぜて使用すると絵の具の透明性が増して下の色が透けて見えます。

ハードタイプを使えば、油絵の具の様に厚塗りができテクスチャーをつけられます。

また、水を加えて塗ると乾燥が遅くなり絵の具が薄まって色の薄塗りができるようになります。

グラデーションをつけるのには便利です。

ソフトタイプは筆跡が残りにくい塗りが可能です。

タイプはそれぞれ使いやすいものを探してみてください。

ジェルメディウムはホルベインの他リキテックスやターナーからもよいものが出ているので
お好きなものを探しましょう。

リターダー

リターダーはアクリル絵の具の乾燥を遅らせるメディウムです。

ジェルメディウムでグラデーションを作る場合は絵の具の乾燥速度と変わりがないのでグラデーションをつけるのが難しいですが、水を加えなくてもリターダーだと30%程乾燥するまでの時間を遅らせることができます。

絵を描き上げたら画面の保護のためにバーニッシュというニスを塗ります。

アクリル絵の具は頑丈なのでバーニッシュを塗らなくても問題ありませんが、さらに頑丈にできます。

紫外線からも保護できます。

アクリル絵の具は元々強いので塗るか塗らないかはは好みですね。

バーニッシュには光沢つや出しのグロスタイプや、つや消しマットタイプなどがあります。

絵に適したタイプ、好みに合わせたタイプを選んでください。

私はつやありのグロスタイプを使うことが多いです。

元の色よりも深みが出てくるので気に入っています。

塗り方は作品にそのまま垂らして塗る方もいると思いますが、お勧めは約10~20%の水と混ぜておいてそれを刷毛で塗る方がムラができないです。

始めに横に塗った場合は次に縦に塗っていきます。

大体2、3回塗れば大丈夫です。

最後に塗るのが縦になる順番で塗っていくのがお勧めです。

絵を飾った時に光が上からくるので、その方が刷毛跡があった場合に目立ちにくくなります。

上記で紹介した写真のバーニッシュは刷毛などで塗るタイプですが、スプレータイプもあります。

スプレータイプはムラになりにくく、あまり厚塗りが好きでない人は薄っすらと幕を張るように仕上げることができます。

塗布の方法は作品から約30cm離して一定の速度で動かしながら横に移動します。

一度乾かしてから、作品を90度回転させ再度一定の速度で横に噴霧していきます。

塗る回数は自分の好みになります。

こちらは必ず有機溶剤が入っているので換気をしながら作業してください。

ここで紹介した道具以外にイーゼルやマスキングについて”筆や絵の道具以外について(その2)”でご紹介しています。

ここまで読んでいただきありがとうございました。