絵画のスタイルにはいろいろあって自分に合った絵画を表現するのが一番相手に伝えることが出来るのだと思います。
自分はどんなスタイルで表現したいのか、どの描き方が合っているのかがなかなか分からない方も多いと思いますが、
迷っていいるときはスタイルを固定せず色々と挑戦してみるのも良いでしょうね。
Contents
絵画スタイルの流れ
絵画のスタイル(様式)はとても多彩なので、大きな流れとして「写実 → 印象・感情 → 抽象・概念」へ広がってきたと考えると理解しやすいかなと思います。
まず、代表的なスタイルを系統別に、わかりやすく整理しました。
現実を忠実に描く系

写実主義(リアリズム)
- 目に見える対象を正確に再現
- デッサン力・質感表現が重要
- 自然・人物・動物・静物すべて向き
スーパーリアリズム(超写実)
- 写真以上の精密さ
- 毛並みや羽毛まで緻密に描写
- 高い技術力が評価されやすい
古典主義
- ルネサンス的な構図・人体美
- 厳密な遠近法と写実を重視
光・空気・雰囲気を描く系


印象派
- 光と色彩の変化を瞬間的に捉える
- 筆触が見える表現
外光派
- 野外制作(戸外写生)
- 日本の風景画に強い影響
感情・内面を表す系



表現主義
- 実物とは違っても感情を優先
- 強い色・歪んだ形
ロマン主義
- ドラマ的、物語性のある画面
象徴主義
- 神話・宗教・夢など
- 写実+幻想性の世界
形や色を追求する系


キュビスム
- 形を分解し再構成
フォーヴィスム
- 強烈な原色表現
抽象絵画
- 具象を捨て、色・線・形だけで構成
物語性・装飾・幻想


シュルレアリスム
- 夢・無意識の世界
幻想画
- 空想・神秘主題
ナイーブアート
- 素朴・童画のような表現
現代系・日本独自
現代アート
- 概念や問題提起を重視
- 技法は自由
日本画(花鳥画)
- 岩絵具・和紙
- 自然や鳥獣を主題にする伝統
▶ 野鳥モチーフはまさに日本画・花鳥画の王道ジャンルでもあります。
ポップ・マンガ的表現
- 日本独特の線描+平面構成
ここまで絵画スタイルにはどんなものがあるのかを見てきましたが、スタイル毎のその特徴や表現方法についてスタイルを大まかに印象派、抽象画、リアリズム、ポップアートに分けてお伝えします。
あくまで、私個人の意見ですので違った認識を持っている方もいらっしゃるかもしれませんので悪しからず。
絵画スタイルの特徴や表現方法
印象派(Impressionism)
1.定義・概観
印象派とは
19世紀後半フランスで生まれた絵画運動で、対象を正確に描くことよりも、「その瞬間に目に映る《光・空気・色の印象》を捉える」ことを重視した表現を特徴とする。
根本思想
従来美術 →明確な輪郭、緻密な描写、主題の物語性・理想化
印象派 →不明瞭な輪郭、素早い筆触、「見え方」そのものを描く、主題よりも視覚体験を最優先。
2.成立・歴史的背景
写真の発明
写真技術の普及により、「正確に描写する役割」は絵画から写真へ移行。
→ 絵画は模写から解放され、新たな役割を模索する必要が生まれる。
産業革命と都市化
- 鉄道・都市交通の発達、パリの都市改造、余暇の拡大。
- 人々は外出し、休日の公園・カフェ・水辺などがモチーフに。
屋外制作の一般化
チューブ絵具の発明で屋外制作が可能に。
人工照明に頼らず自然光を直接描写できるようになった。
アカデミズムへの反発
当時の公的な展覧会「官展(サロン)」は:歴史画・神話画・宗教画を高く評価、印象派のラフなタッチを拒否。
→ モネらは1874年、独立展を開催。
→ モネ作品『印象・日の出』から「印象派」と揶揄され、名称が定着。
3.主要な潮流と見分け方
印象派は一枚岩ではなく、作家ごとに特徴が異なる。
❶ 純粋風景派(モネ系)
特徴
- 光の変化を主役に、同一モチーフの連作。
見分け方
- 筆触が小刻み、影に青紫・黒不使用、主題の輪郭が溶ける
❷ 人物・社交空間派(ルノワール系)
特徴
- 人物、祝祭、都市のにぎわい
見分け方
- 肌や衣服が柔らかく官能的、明るく幸福感のある画面。
❸ 動きの分析派(ドガ系)
特徴
- バレリーナ、競馬
写真的構図、部分切断
見分け方
- 画面構図が大胆、版画的、非対称
❹ 点描法派(新印象主義/点描)
※厳密には後続派
特徴
- 色彩理論に基づく点描表現
見分け方
- 色点の均一な配置、筆触が規則的
4.主な作家と代表作
クロード・モネ
- 『印象・日の出』、『睡蓮』(連作)、『積み藁』
→ 印象派の核。「光の科学者」とも呼ばれる。

ルノワール
- 『ムーラン・ド・ラ・ギャレット』、『舟遊びの昼食』
→ 人物描写の柔らかさ・生命感が特徴。

エドガー・ドガ
- 『舞踏教室』、『エトワール』
→ 印象派の中では最も構成主義的で、デッサンの達人。

カミーユ・ピサロ
- 『モンマルトル大通り(冬の朝)』、『ブールヴァール・モンマルトル』
→ モネの同志・まとめ役。都市を多く描く。

ジョルジュ・スーラ
- 『グランド・ジェット島の日曜日の午後』
→ 「筆触分割」の技法をさらに押し進め、光学的理論を取り入れた点描。

5.技法・制作上の特徴
● 色彩技法
- 黒を極力使用しない
暗部 → 青・紫・緑・補色混色で表現
● 筆触主義
- 混色せず、色を並べて視覚混色させる。
短いストロークを画面に重ねる。
● 屋外即興制作
- エスキース → その場で即描き。
アトリエ仕上げは少ない。
● 未完成美の肯定
- 塗り残しや下地をあえて残す。
絵に“空気の揺らぎ”を与える。
6.現代への影響
■ 写実観の転換
→ 「描く=正確さ」から「描く=感じ方の提示」へ
■ 現代画家の表層技法への影響
- 屋外スケッチ文化、
色彩主導の画面構築、
風景画やスナップ的構図の普及
■ 写真・広告への影響
- 光の演出
ソフトフォーカス表現
フィルム写真のトーン処理
7.描くためのヒント(超実践)
基本セッティング
画材
- 平筆やフィルバート筆などが描きやすい
明るい色中心
8.制作プロセス
① モチーフを見る
- 輪郭でなく光の地点を見る。
影の色を観察(青紫か?)
② 下描きは速く
- 鉛筆数本で「形の目安」のみ
③ 大きな色面を置く
- 空 → 建物 → 地面。
混ぜずに置く - 補色を敢えて使い色彩の対比を利用する
④ 筆触を残す
- こすらず、置いて離す
⑤ 明度対比を作る
- 最明点(太陽光)を1箇所。
影の面を冷色で引き締める
印象派とは「物を描くのではなく、光と空気を描く芸術」
抽象画(Abstract Art)
*抽象主義は非常に幅が広いので、主流派と段階別に分けての解説をします。
定義・概観
具体的な対象(人物や風景)を直接描写せず、色・形・線・質感など視覚要素そのものを主題にした絵画の総称。
19世紀~20世紀に展開。
成立・歴史的背景
写真や産業社会の出現により、絵画が「写す」役割から解放され、内的精神や純粋な形式(色や形)を探求する動きが生まれた。
ピカソらのキュビズム、カンディンスキーの精神主義的抽象、マレーヴィチの幾何学的抽象などが系譜。
主要な潮流
キュビズム
パブロ・ピカソ、ジョルジュ・ブラック
対象を分解・再構成し平面上で同時的に表現。やや具象の残る段階。
非客観的抽象
オルフィズム/構成主義
モンドリアン、マレーヴィチ
幾何学的・数学的秩序を重視。
表現的抽象
抽象表現主義
ジャクソン・ポロック、マーク・ロスコ
筆触やドリップ、色面による感情表現。アクションペインティングやカラーフィールドに分かれる。
幾何学的抽象
ミニマリズム
更に鈍化、簡素化された形。
具象の痕跡が殆どないか、断片化されている。
色彩・形の自己完結(何かを表すためではなく、要素そのものが主題)
素材感や制作行為(たとえば滴る絵の具、引っ掻きなど)が強調されることがある。
作家と代表作
〇ワリシー・カンディンスキー 初期の抽象画の先駆者『インプロビゼーション(即興)』『コンポジション VIII』

〇カジミール・マレーヴィチ 絶対主義に「シュプレマティズム」を創設『白に白』、『黒の正方形』極端に抽象化/非客観

〇ピエト・モンドリアン 『赤・青・黄のコンポジション』、『ブロードウェイ・ブギウギ』で垂直・水平・原色に還元

〇ジャクソン・ポロック 『五尋の深み』アクションペインティング、ドリッピング技法の大作

〇マーク・ロスコ 作品を壁画に表現した『ロスコルーム』。大きな色面による瞑想的絵画
技法・制作上の特徴
表現主義的技法(スプラッタ、ドリップ、スクラッチ)や精密な幾何学的制作(定規・テンプレート)など多様。
素材実験(混合メディア、布、パネルの扱い)も多い。
現代への影響
抽象は現代美術の基盤の一つ。コンセプチュアルアートやインスタレーションの視覚的語彙にも直結している。
描いてみるヒント
1.何を表現するかではなく「どんな視覚体験を作るか」を先に決める。
2.制作プロセス自体(筆の動き、絵の具の流れ)を観察・記録する。
3.制約を設ける(色数を2~3色に限定、形を幾何学的に固定)と方向性が出る。
リアリズム(Realism)
定義・概観
現実世界をありのままに、客観的・詳細に描くことを目指す美術運動。
19世紀中葉のフランスで、社会的現実や庶民の生活をテーマに台頭したが、広義では写実的表現全体を指す。
成立・歴史的背景
ロマン主義の感傷や理想化への反発として、日常の労働者や農民、都市のありふれた風景を題材にした。
写真の影響で視覚的再現性が問い直されるなか、詳細な観察を重視。
視覚的特徴
対象の細部にこだわる正確な描写(質感、陰影、微妙な色調)。
社会的なテーマ(労働、貧困、日常)を扱うことが多い。
写真的で「真実らしい」構図や光の扱い。
作家と代表作
〇ギュスターヴ・クールベ 『石割人夫』、『オルナンの埋葬』など、庶民や労働をテーマにした大作。

〇ジャン・フランソワ・ミレー 『落穂拾い』など農民の生活を詩的に描写。

〇リチャード・エステス、チャック・クローズ等
(20世紀以降)写真に近い精密さを狙うフォトリアリズム/超写実(Photorealism/Hyperrealism)
技法・制作上の特徴
観察・スケッチ、カメラ下絵の活用、詳細なレイヤー描写。
油彩の薄塗やグレージングで滑らかな質感を作ることが多い。
現代への影響
社会派ドキュメンタリー的な美術、写真と絵画の相互作用(フォトリアリズム)に影響。
現代アーティストはリアリズムを用いて社会性・政治的メッセージを提供する。
描いてみるヒント
1.対象をじっくり観察してスケッチを重ねる。光の方向、陰影を正確に取る。
2.写真を参照する場合カメラの歪みや、色温度に注意。
3.細部は段階的に積み上げる(下地⇒中間色⇒細部の描写⇒ハイライト)。
ポップアート(Pop Art)
定義・概観
1950~60年代に主にアメリカとイギリスで発展した運動。
大量生産される消費材、広告、漫画、映画など大衆文化(ポップカルチャー)を主題に取り込み、日常のイメージを高い視覚言語で表現した。
視覚的特徴
鮮やかで平坦な色面、輪郭の明瞭さ。
漫画的な点描(ベンディドット)や文字、ロゴ使用。
商品や有名人(セレブリティ)の反復表現(複製・シリーズ化)。
アイロニーや批評精神(消費文化の肯定と批判の両面)。
作家と代表作
〇アンディー・ウォーホル『キャンベルスープ缶』、『マリリン・モンロー』シリーズ(反復と写真的図像の使用)。

〇ロイ・リキテンスタイン『ヘアリボンの少女』漫画風の大判ドットと太い輪郭

〇クレス・オルデンバーグ『The Street』、『The Store』巨大スケールの消費物のオブジェ。
技法・制作上の特徴
シルクスクリーン印刷や写真のトレース、スクリーン技術など工業的手法を積極採用。
メディアや消費材のイメージの引用・再配置。
現代への影響
ストリートアートや広告美学、現代のポップ/ミーム文化、商業アートと美術の境界のさらなる滑稽に寄与。
コンセプチュアルな引用芸術とも親和性が高い。
描いてみるヒント
1.日常のイメージ(食品パッケージ、ロゴ、雑誌写真)を拡大・繰り返し配置。
2.平坦で、鮮明な色、はっきりした輪郭を用い、シルクスクリーン風の表現。
3.アイロニーやテキストを入れてメッセージを作るのもポップアートの城東手段。
それぞれの比較
印象派:光と瞬間の色彩。筆触が目立ち、具象(人や風景)を描く。
リアリズム:対象の「ありのまま」。細部と質感の精密さ。
抽象画:対象を離れ、色・形・線そのものが主役。具象の痕跡が少ない。
ポップアート:大衆文化の図像を用い、平坦で明快な色面・輪郭。社会批判やアイロニーを含む。
まとめ
色んな絵画スタイルがありますが今の自分はどんなスタイルで描いているのかを確認できたことと思います。
自分に合っているのがスタイルの混合かもしれませんし、これから自分のスタイルが変化していくこともあります。
鑑賞するとき好きなスタイルと自分のスタイルが必ずしも一致している必要はないので、選り好みせずに鑑賞してそれぞれの良さを吸収していきましょう。











ここまでご覧いただきありがとうございました。