今回のモチーフになったオオワシは2月に羅臼で出会いました。
早朝から船に乗り流氷のある場所に着くと、すでにオオワシやオジロワシが流氷の上に集まっていました。
オオワシやオジロワシが流氷の上に沢山いますが、争うことなくのんびりしているように見えました。
なによりも大型の猛禽類ですが、人をあまり恐れていないようでした。
オオワシってどんな鳥
何といっても日本最大級の猛禽ですね。
留まっている姿も1m位あり、羽を広げると2m50cmにもなるとっても大きい鷲です。
よく目立つのが黄色く大きな嘴です。嚙む力も相当なものなんでしょうね。
成鳥になるには6年から7年かかると言われていますが、成鳥では羽の殆どが真っ黒になりますが、肩と尾羽、脚の羽が白になりハッキリ他の鳥と区別がつきます。

オオワシは越冬のため日本に渡って来ます。
食料にするのは殆ど海や川や湖の魚です。時には鳥類も捕まえて食べるようです。
オホーツクのオオワシは渡来してから1月末までは木の上から水面を見つめ魚を探しています。
とても目が良くて、数百メートル先からでも魚がいるのが分かるみたいですね。
北海道のオホーツク海には1月末から3月にかけて北から流氷がやってきます。
その時期には流氷の上で休んでいるオオワシとオジロワシに会える可能性が高いのです。
下描き
今回の作品は、モチーフの鳥が大きいのでF15号に描きました。
流氷に朝陽が差し込み、全体が薄いピンク色の世界になりました。
そんな状況の大きな流氷の上に留まるオオワシを描きましたよ。
まず、写真をトレースし、オオワシの形を決めておきます。

写真の裏側にコンテパステルを塗ります。
それをキャンバスにテーでしっかり止めて、インクの出なくなったボールペンなどで輪郭を写していきます。
オオワシをマスキングする
オオワシ部分にマスキングシートを貼ります。

オオワシの部分にマスキングシートを貼ります。
オオワシより少し大きめに切ったマスキングシートの上から指や筆の後ろ側で擦り、シッカリと貼っていきます。
特に輪郭の部分を強めに擦り、浮かないように貼り付けます。
次に、カッターで輪郭線に沿ってシートをカットしていきます。
キャンバスを傷つけないようにあまり強く力を入れないようにします。
カットが終わったら輪郭部分を片方の手で押さえながら、もう片方の手でゆっくりと剥がしていきます。
全て剥がし終わったら、もう一度貼ってあるマスキングシートの縁を指でしっかり押さえておきます。
背景作り
背景部分は全て流氷になります。
流氷を描く
流氷をどう描いていくか、逆光の流氷のイメージを持って進んで行きましょう。
背景の下地作り
流氷が朝日に照らされて紫色になっているので、青と赤で作っていきます。
ここではまず青を使いました。

白にフタロブルーとイエローオーカーを少しだけ混ぜた青色を作り、それにジェルメディウムで透明にした絵の具を塗っていきます。
横のストロークで塗りますよ。
氷の塊の位置を決める
奥まで続く流氷群の大きなところに陰色を塗り、位置決めします。

背景に塗ったブルーよりもう少し濃いブルーを作り大きな氷のところにラフに塗っていきます。
朝陽の色を乗せる
朝日で紫からピンク色に見えるので、最初に塗った青色の上から朝日の色を乗せます。

氷に朝陽が当たっているところがピンク~オレンジに見えるので、オレンジ色に少しバーントシェンナと白を加えたオレンジ色を作り最初に塗った青い部分に重ねます。
その際に、全部塗りつぶさず青が隙間から見えているくらいで大丈夫。
これも横のストロークで塗っていきます。
氷の形を決める
大きな流氷とそれ以外の小さな氷の形を輪郭部分を描いて決めていきます。

逆光で氷の輪郭が光っているので、先に使ったオレンジ色に白を多めに加えた白を作ります。
この絵の具で氷の上の部分の輪郭を描いて形を決めます。
筆は少し細めの筆の方が描きやすいです。
小さな氷を描く
輪郭を決めたら大きな氷ではなく小さい氷も描いておきます。

大きな氷で使った青い色で小さい氷も画面全体に作っていきましょう。
手前の小さい氷は形を意識して作りますが、遠くに行くほど形が分からなくなるので、あまり形を描きません。
遠くは色も薄く、形も曖昧です。
オオワシの留まっている大きな氷も色を付けておきましょう。
遠くに塗った氷に使った薄い青で塗っておきます。
氷全体をピンクに染める
流氷全体にピンク色を被せていきます。

赤と白とオレンジを少し加えたピンク色にジェルメディウムで透明にした絵の具を作ります。
これを海面全体に塗っていきます。
幅広のブラシで横のストロークで塗ります。
刷毛跡を消す
絵の具が乾かないうちに手早くスポンジで叩いていきます。

出来るだけ素早く行ってください。
一生懸命にポンポンと叩いていきます。
流氷にグラデーションを付ける
流氷の上側と下側で色が違います。
これは氷は白かったり、透明だったりして光を透過しします。特に上の方や周囲が光を透過するので、その部分がオレンジ色をしています。

上の方がピンク色がかっていますが、下に行くほど陰色の青になります。
光が透けていることをイメージしてグラデーションを付けます。
朝陽は右奥から来ていますよ。
オオワシを描く
オオワシの羽を描く
黒い羽の輪郭を描く
黒で描いていきます。

これで羽の形が決まるので、正確に描きます。
ある程度細い筆の方が描きやすいです。
羽を細かく描く
黒い羽の羽軸、羽枝を描きます。

黒い羽の部分の羽を細かく描いていきます。
羽の流れに沿って羽軸と羽枝を描き、羽の一枚一枚の形を決めます。
白い羽を描く
白い羽の形を決める。

白いキャンバス地のところに白では形が決まりませんよね。
逆光で白い羽も陰になっているので、薄いブルーで羽を描いていきます。
ここでも羽軸と羽枝を意識して描きます。
羽軸部分は少し濃い目のブルーで描いておきましょう。
光が透けている様子の羽の部分には少しピンクを加えて描きますよ。
黒い羽にディテールを付ける
黒い羽の部分の立体感を付けていきます。
陰色を付けていきます。

黒にバーントシェンナを加えた黒色を作ります。
一枚の羽でも光の当たりが弱い部分は黒を多めにして塗っていきます。
上側の羽の陰になるところにも影があります。
全体を陰色に
逆光のために、体全体が陰ですので、更に暗くしていきます。

先ほど使った黒にジェルメディウムを少量加えて透明にした黒を作り、大きな平筆で全体に塗っていきます。
一度乾いたら、暗くしたい部分には更に塗り重ねていきます。
頭部の羽を描く
首から上部分の羽はザクザクした形をしていますので、それを描きます。

肩より上の頭部の羽は体の羽と少し違い、細い羽が生えていますので細い筆で描きます。
周りに飛び出すように生えていて、ザクザクした表情をしています。
黒にイエローオーカーを加えた絵の具でザクザクした感じを出して描きます。
目を描く
虹彩は黄色で描きます。

今回は虹彩色を黄色で描きます。
また、目の上の庇も黄色で描きます。
目の中心の丸と虹彩の周りの輪郭部分を黒で丁寧に描きます。
できるだけ細い筆で描いてください。
私はぎりぎりまでキャンバスに近づき、ルーペを使って描いています。
嘴を描く
大きな嘴を描きます。

嘴は黄色ですが、やはり陰になっているので、オレンジ色とバーントシェンナを少量加えた色で塗ります。
嘴に少し段差があるので、その部分は色を濃くします。
当然下の嘴にはあまり光が当たりませんので、暗くします。
上の嘴と下の嘴の境界面はかなり暗いので、黒に近い色で塗っていきます。
脚の指を描く
オオワシの脚の指は太く短いです。
色は黄色ですね。

使う絵の具は基本的に嘴の色と同じで大丈夫です。
前面部分は鮮やかな黄色で、体の下部分は暗いオレンジ色にします。
爪を描く
オオワシの爪は魚を掴むのに向いていて長いです。

黒に近いグレーで描きます。
前面の爪の上は光が当たっているので、明るくします。
羽の明るい部分を描く
まず、頭部のザクザクした羽は外に広がっているため、飛び出している部分に日が当たり明るくなっています。

オレンジ色に黄色を混ぜた色で塗ります。
黒の上に塗るので、下の黒が透けて見えそこまでおかしいことにはなりません。
最後に、オオワシの輪郭部分にも塗っていきます。
光が僅かに回り込んでくるので、その部分が明るく見えています。
完成
細かいところを微調整して完成とします。

こんな感じになりました。
まとめ
今回は過去最大のF15号に挑戦してみましたが、案外と出来たかなと思います。
現在は作業場所の制限からこのサイズが限界です。
朝陽の逆光という場面なので、順光の流氷よりも雰囲気を出すのが難しい状況だったのかなと思います。
今後、順光の流氷も描いてみたいですね。
動画もありますので、参考までにご覧ください。
動画にはBGMが流れますので、音量に注意してください。

ここまでご覧いただきありがとうございました。
こんにちは!
画家の佐藤 静です。