
アクリル絵の具で描いた作品
構図をどう決めていったらよいのか、分からないとか自身が無い方にお伝えします。
まずは構図の基本三分割構図と黄金比分割と黄金螺旋を勉強していきましょう。
最後までご覧ください。
Contents
三分割構図
三分割構図はどんな場面でも使えるいわばオールマイティな構図で、ここに当てはめていれば間違いない構図と言えます。
それでは始めましょう。
三分割構図線を作る
構図のなかで、最も基本であり、最も使われているのが三分割の構図になります。
今描こうとしているモチーフにふさわしいと思ったキャンバスをイメージしてください。
それでは、三分割の線を作っていきますね。

まず、キャンバスに対角線を引きます。

次に、上の辺の中心から下の角に向かって線を引きます。
今度は下の辺の中心から今引いた線の対角に向かって線を引きます。

今引いた線と、対角線の交点を通る垂直の線と、水平の線を引きます。
格子状に全部で4本線が引けると思います。

これで、三分割線の完成です。
モチーフがこの三分割線やその交点に来ると、安定した構図になっていると言えます。
一つの作品にこの線のすべてを使うということではありませんし、ピッタリ重なっていなくても大丈夫なのです。
この三分割法は写真撮影でも使います。
カメラのファインダーにもこのようなグリッド線を着けて構図を決めることがありますよ。

三分割線を作る際に引いた対角線や斜めの線も構図を検討するのに役に立ちます。
山や谷、木や森、人の位置や傾きなどこの線を利用して構図を決めることができるので、
三分割した線だけではなくこれらの線も活用すれが生き生きとした、伸びやかな作品が出来上がることでしょう。
三分割構図線の活用
絵画にこの三分割構図線を当てはめて確かめてみましょう。

さて、この作品で構図を見てみましょう。
奥の山は大きな三角からは少しずれていますが、その形はおおむね合っています。
三分割線の横の線の下側と、水面の位置が合っていますし、上の横線と森の上側が合っています。
また、対角線に仕切られた、左右の森もおおむね収まっていますね。
このように構図的には三分割法によって心地よい構図に収まっていると言えます。

カメラのファインダーにはこのような四分割線もありますので、もっと複雑な構図も考えることが出来そうです。
黄金比構図・黄金比、黄金長方形について
黄金比は古代から人間が最も心落ち着き、美しいと感じる比率です。
是非知っておくと良い構図のヒントになると思います。
まずは、黄金比を考えるうえで知っておくと良い、フィボナッチ数列です。
フィボナッチ数列の定義と黄金数
フィボナッチ数列(フィボナッチ数列)は、各項がその前の2つの項の和となる数列です。その名前は13世紀のイタリアの数学者レオナルド・フィボナッチに由来します。
フィボナッチ数列は、次のように定義されます:
F0=0
F1=1
Fn = Fn-1 + Fn-2 (n≧3)によって定義される数
したがって、数列は次のようになります: 1、1、2、3、5、8、13、21、34、55…
黄金比はこの隣り合った数字の大きい方を小さい方の数字で割った比です。
1/1=1
2/1=2
3/2=1.5
5/3=1.6666…
8/5=1.6
13/8=1.625
21/13=1.61538…
34/21=1.61904…
55/34=1.6176…
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1.618…に近づきます。
フィボナッチ数列Fnの一般項は
φ = (1+√ 5)/2 = 1.618…
これを黄金数と呼びます。
黄金比

直線ACを引き、その直線の長さを黄金数1.618…としたときに、1となる点Bを取ります。
この時、ABを1とすると、BCは1.618…となります。
この直線AC上の点Bは黄金点Φとなり、この比率1:1.618…のことを黄金比(別名:神聖比例)と呼びます。
この黄金比を使って描いた絵画は美しいとされていますね。
モネの作品「印象・日の出」で黄金比を確認
この作品はモネがル・アーヴルで部屋の窓から描いた作品で、霧の中の太陽と、そそり立つ何本かのマストを前景に描いたといわれています。
港の浚渫工事の様子や船やドックが朝日が昇る中で動き出しているところを描いています。
今回は黄金比も取り入れて見ていきましょう。

横の線は、上から順に三分割線、中央線、三分割線、四分割線です。
手前の小舟は画面の中央線上の四分割線に、左上の小舟は三分割線に合っていて、更に左上に小舟がありこれらは直線状に配置されている。
太陽の位置は三分割線上にあり、太陽とその水面の反射の位置関係は8:5(1.618:1)の黄金分割(黄色の縦線)の位置である。
更に、船やドックの位置も中央線と三分割線の中に納まっていて、黄金分割(黄色の横線)の上にあります。
やっぱり名画は何かが違う!のですね。
黄金長方形
次に、最も美しいとされる長方形はこの黄金比で作った黄金長方形です。

黄金比が取り入れられていることで有名な絵画をみてみます。
レオナルド・ダ・ヴィンチ:『モナ・リザ』
「モナ・リザ」は黄金比の構造を持つとされる絵画の代表例です。
顔の縦横比の関係が黄金比の比率に近いとされています。
背景と本体(モナ・リザ)の構図に関しても、推理の誘導が黄金比を意識したものと解釈されています。
ダ・ヴィンチは数学や幾何学に深い興味を持ち、「神聖比例」に基づいて美しさを追求していました。

黄金長方形をモナリザの顔の部分に合わせると、ピッタリとハマりました。

因みに、よく言われる名刺が黄金比で出来ているらしいとのことで、調べてみました。
名刺のサイズ:91mm×55mm その比は 99/55=1.6545となり 黄金比に近いです。
この1:1.618…は覚えにくいので、近似的に表すと、
5:8(1:1.6)で覚えましょう。
実際絵画では、この比率の位置にピッタリ合っていなくても、問題ないからです。
この黄金長方形の比率に最も近いキャンバスサイズは、M5号(350×220)の1.59とM10号(530×333)の1.59です。
両方ともMです。意外と横長のサイズですよね。
黄金螺旋とは
これまで直線の三分割線や黄金比について解説しましたが、曲線の黄金螺旋に付いてもお話していきます。
黄金螺旋の作り方
黄金長方形の中を正方形で次々に区切っていくと、

この図のように黄金長方形の左側に正方形を取ります。
すると、残った右側の長方形も黄金長方形になります。
同じように右側の黄金長方形の上側に正方形を取ると、残った下の長方形が黄金長方形になります。
次々と同じ作業をしていきたいところですが、無限に続きそうなので見える範囲で終了。
この図のそれぞれの正方形部分の内側に接するように1/4円を描いたのが上の図になります。
このように螺旋が出来上がります。
これを黄金螺旋と呼びます。
自然界に存在する黄金螺旋?
下の写真の貝も螺旋を描いているのが分かりますね。

分かりやすいように線を引いてみると・・・

多くの貝はこのように螺旋を描いています。
よくオウムガイの例で説明されているようにこの貝の螺旋が黄金螺旋としてよく知られているようですが・・・
スイスの数学者で科学者のヤコブ・ベルヌーイによる対数螺旋(ベルヌーイ螺旋・等角螺旋)があり
黄金螺旋はその一つで、ピッチは約17度になります。
しかし、オウムガイのピッチは約8度~10度ほどなので一致しません。
サザエの貝は約10度程度です。
因みに、銀河の螺旋のピッチは10度~40度と広いですので、黄金螺旋と一致する場合があります。

このように自然界には螺旋を描いているものは結構たくさんあるのですが、黄金螺旋にピッタリとそのままというものは少ないようです。
ですから、対数螺旋の中の一つに黄金螺旋があり、螺旋構図を作る際にも黄金螺旋をピッタリはめなければと思わず、大体の螺旋構図でいいという意識で決めていければいいのではないでしょうか。
まとめ
ここまで最も基本である構図の三分割構図と、黄金比についてお話してきましたが、
如何でしたでしょうか。
世の中には、”この作品は黄金比や黄金螺旋で出来ていて素晴らしい”などの講評を見かけたりしますが、結構無理やり形をはめているように思えるのは私だけでしょうか。
もちろん黄金比をシッカリ考えて当てはめて描いている作品もあるでしょうけどね!
私は、基本としてこのような事を知っていれば正確にその構図にピッタリ合っていなくてもいいんだということをお伝えしたかったのです。
ただ、この構図を知っていれば、基本的な構図に迷うことは少なくなると思いますので、よく理解して制作の参考にしていただければと思います。

ここまでご覧いただきありがとうございました。
こんにちは。
画家の佐藤 静です。