簡単に言えば、遠くにあるものは遠くに見え、近くにあるものは近く見えるようにする方法ですね。
誰でも意識せずに使っていると思いますが、ここでおさらいの意味も含めて見ていきましょう。
それでは、どうぞご覧ください。
重畳遠近法
最初の画像を見てください。
二つの丸いものが重なっていますが、重なっている部分をキッチンペーパーで見えなくすると、前後関係がはっきりしません。
真ん中のキッチンペーパーを外すと、前後関係がわかります。
左が後ろで、右が前になっていることがわかります。
このように重畳遠近法とは、物の前後をはっきりさせるため、あえて重なるように描くことで、奥行きを感じる遠近感を作ります。
重なっていないと両者の前後差がわかりずらいですね。
連なる山々も重なっているので前後関係がよくわかります。
お月様が二つ?みたい・・
線遠近法(透視図法)
2点線遠近法は手前に四角い建物をイメージする時、その建物を立方体として考えて下さい。
建物の左側の地面と接している直線をずっと先まで伸ばします。すると目線の位置(EL)の1にぶつかります。そこを消失点といいます。
そして、屋根の部分の両側も線を引いていきますと、1の消失点のところで一点に収束します。
同じように建物の右下の地面と接している直線をそのまま伸ばしていくと、2の消失点にぶつかります。
屋根の面の両側も同じように線を伸ばしていくと、目線の位置(EL)の2の消失点で一点に収束します。
このような二か所で収束する形の考え方を、2点線遠近法といいます。
ELは見ている人のアイレベル(目線の位置)の意味で、見ている人と建物が同じ平らな面にあると仮定すると、地平線と一致します。
下の写真は背の高いものを下から見上げたものです。
背の高いものは上にすぼまって見えます。
建物の輪郭の延長線の先はやはり一点に収束します。
今度の消失点は目線の位置にはきませんね。空の上あたりです。
この写真、カメラは広角レンズを使ってるのかな~
これを含めて3点線遠近法といいます。
さあ、下の写真を見てみましょう。
上り坂ですが、この坂に沿って線を引き延長した目線より上で一点に収束するのがわかります。
下り坂でも同じように線を引いていきますと、消失点は目線より下側になります。
ここでわかるように消失点は必ずしも地平線ではないことがわかります。
消失点はあらゆるところにありますので、その時の状況をよく観察します。
絵を描くときにもこのことがわかっていないと、チグハグな絵になってしまうので、注意しましょう。
消失点は、遠くならどこにでもあるんですねー
色彩遠近法
これは絵を描くときの一つのテクニックになります。
下の青の背景に赤い丸と、赤い背景に青い丸の図をじっと見つめてください。
左の赤い丸が手前に、右の青い丸が奥にあるように見えませんか。
青は寒色になるので収縮したように遠くに見えます。
赤は暖色になるので膨張したように手前に見えます。
色彩遠近法とはこの寒色と暖色を使って奥と手前を意識させて描く技法です。
消失遠近法
メインのモチーフにピントが来ていて、後ろに行くほどボヤっとして見えなくなる技法です。
上の写真を見てみると、手前にピントが合いハッキリと見えますが、後ろ側は奥に行くほどピンボケ状態となっています。
一番手前の絵の具のチューブが際立って見えてきますね。
このように主役を目立たせるために、背後を遠いほど霞んだようにする技法です。
絵に描くと下のような感じで後ろの桜の花は薄っすら見えているぐらいにしました。
遠くは描かなくても、見ている人が想像してくれます。
この消失遠近法は、遠くになるほど見えにくくして、主役を引き立てるという技法です。
望遠レンズや、接写レンズなどを使うとこのような効果がでるよね。
空気遠近法
これは風景画などによく使う技法です。
手前の山は草木の緑がわかりますが、遠くに行くにつれ色が無くなり青っぽくなります。
これは遠くの山ほど見ている人との間の空気の相が厚くなり、そこの空気の相にあるチリや水蒸気などもその量が多くなります。
その空気の相のチリや水蒸気が光を散乱させて青白くなり、遠い山ほど青白い色が本来の山の色を覆ってしまいます。
また、山の頂上より下の方がその傾向が強いのは、下に行くほどチリや水蒸気の量が多いためです。
この空気遠近法は、遠くのものほど空気の相を感じさせて描く技法になります。
風景画を描きたい方は、ぜひこの技法を使ってみてください。
もっと遠くの山は空と色が溶け合って、判別できなくなるよね。
上下遠近法と大小遠近法
上下遠近法とは画面の上側が奥で、下が手前という遠近法です。
大小遠近法とは同じ大きさのものが、近くより遠くにあるほど小さく見えるという遠近法です。
遠近法を使った絵画
遠近感の感じられる絵を見てみましょう。
アメリカの印象派画家のチャイルド・ハッサムの作品「雨のボストン」です。
この絵は先に説明した遠近法をたくさん使っているのがわかります。
色彩遠近法以外は、この絵の中に詰まっていると思いませんか。
こういった素晴らしい絵を見ることが一番の勉強になりますね。
まとめ
遠近法は絵画に欠かせない技法の一つです。
誰でも意識しなくてもわかっていることだと思いますが、絵にするときに意識していないとミスしてしまうことでもあるのです。
遠近法を正確にできるだけで、魅力的な絵になります。
特に外の風景や、景色を描くときは準備段階でこれを意識しておくと良いですね。
ここまでご覧いただきありがとうございました。
こんにちは。
画家の佐藤 静です。